執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
【広告】本ページには広告が含まれます。記事の内容は広告主の影響を受けていません。
※ 本記事は令和8年度診療報酬改定の公表資料に基づきます。適用日が他項目と異なるため、特にご注意ください。
令和8年度改定で、服用薬剤調整支援料2が90〜110点から1,000点になりました。
桁が違います。調剤報酬でこれだけの引き上げは珍しく、それだけ制度側がこの業務に期待しているということだと思います。
ただし、この点数はまだ算定できません。適用は令和9年6月1日からです。他の改定項目と適用日が違います。ここを間違えると誤請求になります。
逆に言えば、準備期間が与えられているということです。要件を見ると、その意味がよくわかります。
改定前後の比較
| 改定前 | 改定後 | |
|---|---|---|
| 点数 | イ 110点(施設基準あり) ロ 90点 | 1,000点(区分なし) |
| 算定頻度 | 3月に1回 | 6月に1回 かかりつけ薬剤師1人につき月4回まで |
| 実施者 | 保険薬剤師 | かかりつけ薬剤師 (必要な研修を受けた者に限る) |
| きっかけ | 重複投薬等が確認された場合 | 服用中の薬剤の調整を必要と認める場合 |
| 適用日 | — | 令和9年6月1日 |
点数は約10倍になった一方、算定頻度は3月に1回から6月に1回へ絞られました。回数を減らして単価を上げる——「たくさんやる業務」ではなく「じっくりやる業務」に位置づけ直された、と読めます。
【広告】薬剤師の求人・派遣・転職「ファルマスタッフ」
株式会社メディカルリソースが運営する薬剤師専門サービスです(2000年設立)。転職だけでなく「派遣」を扱っているのが特徴で、有料職業紹介(13-ユ-010743)と労働者派遣(派13-010770)の両方の許可を持っています。拠点は全国12支店。運営元は日本調剤グループです——選ぶ材料になるので書いておきます。
「派遣」は、常勤か辞めるかの二択しかないと思っている人ほど知っておく価値があります。いま動く予定がなくても相場は交渉材料になりますし、地域差は大きい——厚労省の偏在指標で見ると、足りない地域ほど条件は動きます。在宅に移りたい方は「力を入れています」を届出で見分ける方法もどうぞ。
※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。
新しい算定要件
改定後の算定要件は次のとおりです。
複数の保険医療機関から6種類以上の内服薬(特に規定するものを除く。)が処方されている患者について、患者又はその家族等の求めに応じ、かかりつけ薬剤師(患者の服薬状況等に係る総合的な管理及び評価を行うために必要な研修を受けたものに限る。)が、当該患者の服用中の薬剤を継続的及び一元的に把握した結果、服用中の薬剤の調整を必要と認める場合であって、必要な評価等を実施した上で、処方医に対して、当該調整について文書を用いて提案した場合には、同一の患者に対して6月に1回に限り、かかりつけ薬剤師1人につき月4回まで所定点数を算定できる。
ハードルが3つ上がっています。
- かかりつけ薬剤師であること——服薬管理指導料1のイ・2のイを算定できる体制が前提になります
- 必要な研修を受けていること——「患者の服薬状況等に係る総合的な管理及び評価を行うために必要な研修」
- 「必要な評価等」を実施すること——後述の6項目
単に重複投薬を見つけて疑義照会する、という業務ではなくなりました。
「必要な評価等」として求められる6項目
留意事項通知では、具体的に必要な実施事項が示されています。
| (イ) | 薬物治療に関する患者又はその家族等からの主観的情報の聴取 |
|---|---|
| (ロ) | 検査値等の薬物治療に必要な客観的情報の収集 |
| (ハ) | 服薬支援に必要な患者の生活状況および意向に関する情報の聴取 |
| (ニ) | 各服用薬剤がもたらす治療効果および有害事象の評価 |
| (ホ) | 解決すべき薬剤関連問題の特定および整理 |
| (ヘ) | 服用薬剤調整後の観察計画および対応案の立案 |
並べてみると、これは薬物療法を最適化する一連のサイクルそのものです。改定資料でも「薬物療法を最適化するサイクル」として図示されており、関連情報の入手 → 現在の治療の評価 → 薬剤関連問題の特定 → 他の治療選択肢の評価 → 推奨案の提示 → アウトカムのモニター、という流れが示されています。
(ロ)の検査値と(ヘ)の観察計画が、特に重いと感じます。
検査値を入手する仕組みがなければ(ロ)は満たせません。処方箋への検査値記載、患者からの情報提供、電子処方箋やマイナポータル経由の情報——どの経路で検査値を得るかを、今のうちに設計しておく必要があります。
(ヘ)の観察計画は、提案して終わりにしないという意味です。調整後にどう追跡するかまで含めて1件と考えられています。
適用日が令和9年6月1日である意味
ここが実務上いちばん重要です。
令和8年度中は、この1,000点を算定できません。他の改定項目は令和8年6月施行ですが、この項目だけ1年遅れています。
なぜ1年空けたのか。要件を見れば理由は明らかで、研修と体制整備に時間が必要だからだと考えられます。
つまりこの1年は、準備期間として与えられているということです。令和9年6月に算定を始めたいなら、逆算するとこうなります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 今すぐ | かかりつけ薬剤師の施設基準を満たす薬剤師を確保・届出する |
| 今すぐ | 自局にJPALS CLレベル6・専門薬剤師の該当者がいるか確認する |
| 〜令和9年前半 | 対象薬剤師が研修を修了する |
| 並行して | 検査値を入手する経路を確保する |
| 並行して | 提案文書と観察計画のフォーマットを作る |
| 令和9年6月〜 | 算定開始 |
「必要な研修」の詳細は、今後の通知等で示される部分があります。現時点の公開情報では、どの研修が該当するかまでは確定していません。ここは情報が出次第、追記します。
「必要な研修」は日本老年薬学会のものです
該当する研修が明らかになりました。2つのうち、どちらかを満たす必要があります。
- 日本老年薬学会「老年薬学 服薬総合評価研修会」の修了
- または、日本老年薬学会が定める「老年薬学認定薬剤師」の取得
ただし——ここからが本題です。
研修を受けるための条件
「老年薬学 服薬総合評価研修会」の受講資格は、次のいずれかを持つ認定薬剤師に限られています。
| 認定制度 | 求められる水準 |
|---|---|
| 日本薬剤師会 JPALS認定薬剤師制度(G25) | CLレベル6の認定取得者 |
| 日本医療薬学会 | 地域薬学ケア専門薬剤師 |
| 日本医療薬学会 | 薬物療法専門薬剤師 |
壁は二重になっています。
- かかりつけ薬剤師の施設基準を満たす服薬管理指導料1のイ・2のイを算定できる体制
- JPALS CLレベル6、または日本医療薬学会の専門薬剤師を取得するここが最も時間がかかる。研修の受講資格そのもの
- 老年薬学 服薬総合評価研修会を修了する(または老年薬学認定薬剤師を取得する)ようやく算定要件を満たす
適用が令和9年6月1日と1年遅らされている理由が、ここではっきりします。研修を受けるための資格を取るところから始める薬剤師が多いからです。
逆に言えば、JPALS CLレベル6や専門薬剤師を既に持っている薬剤師がいる薬局は、大きく先行できます。1件1,000点を算定できる薬局は、当面かなり限られます。
まず自局に該当者がいるかを確認してください。いなければ、JPALSのCLレベルを上げるところが実際のスタート地点になります。
1件1,000点の意味を考える
1,000点は10,000円です。患者3割負担なら3,000円を患者が負担します。
この金額を患者に説明できるか——実務ではここが問われると思います。「薬を減らす提案をしたので3,000円です」では納得されません。
6項目の実施事項は、裏を返せば説明の材料でもあります。生活状況を聞き、検査値を確認し、各薬剤の効果と有害事象を評価し、問題を整理して、調整後の見守り方まで計画する。そこまでやったから1,000点という組み立てになっています。
かかりつけ薬剤師1人につき月4回までという上限も、この水準の業務を月4件が限度と見ているということでしょう。1件あたり相応の時間を使う業務として設計されています。
まとめ
- 服用薬剤調整支援料2が90〜110点 → 1,000点に
- 適用は令和9年6月1日から。令和8年度中は算定できない
- 算定できるのは必要な研修を受けたかかりつけ薬剤師のみ
- 頻度は同一患者に6月に1回、かかりつけ薬剤師1人につき月4回まで
- 6項目の実施事項が必要。特に検査値の収集と調整後の観察計画が重い
- この1年は準備期間。研修と検査値入手経路の確保を今から進める
あわせて読みたい
- かかりつけ薬剤師指導料が廃止|服薬管理指導料イ・ロの分岐と新設加算2種を通知原文から整理
この加算の前提となる、かかりつけ薬剤師の施設基準はこちらです。 - 調剤時残薬調整加算・薬学的有害事象等防止加算とは|7日分ルールと6日分以下の例外を整理
- 電子的調剤情報連携体制整備加算 ~2026年度調剤報酬改定~ をやさしく解説
出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(保険局医療課)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf - 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号・0619訂正後)別添3
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713883.pdf
※「必要な研修」は日本老年薬学会「老年薬学 服薬総合評価研修会」の修了、または同学会の「老年薬学認定薬剤師」の取得です。研修の受講資格は JPALS(G25)CLレベル6、日本医療薬学会の地域薬学ケア専門薬剤師または薬物療法専門薬剤師に限られます。

